「都会は刺激があって、ADHDの人には向いている」 そんな言葉を耳にすることがありますが、僕は実体験を持って、その真逆の結論に辿り着きました。
僕は現在、地方都市で会社員として働きながら、娘の育休を取得しています。
ADHDと双極性障害という特性を抱えながら、かつては都市部で「普通」になろうと必死に消耗していました。
しかし、都会の「便利さ」を捨てて地方へ移住したことで、僕の脳の霧(ブレインフォグ)は劇的に晴れました。
今回は、ADHDの僕がたどり着いた、脳を疲れさせないための「環境ハック」についてお話しします。
電車という「パニックの装置」を捨てる
都会での生活で、僕が最も脳のリソースを削られていたのは「移動」の時間でした。
ADHDの特性として、不注意によるミスや、聴覚・視覚からの情報の過剰な取り込みがあります。
都会の電車やバスは、まさにその特性にとっての「地獄」のような空間でした。
乗り間違いの恐怖 複雑すぎる路線図。急行や各駅停車の見分け。一瞬の不注意で逆方向の電車に乗ってしまい、パニックになることが何度もありました。
窮屈な「感覚の侵食」 満員電車の密着感、周囲の話し声、スマホのバックライト。脳がすべての刺激を「自分事」として拾ってしまい、会社に着く頃にはすでに脳のバッテリーが半分以下になっているような状態でした。
地方に移住してからは、移動の主役は「車」に変わりました。
車内は、僕にとっての「移動する個室(聖域)」です。
誰にもパーソナルスペースを侵されず、好きな音楽をかけ、好きな室温で過ごせる。この「情報の遮断」こそが、ADHDの脳には不可欠な休息でした。
また、万が一道を間違えても、次の角を曲がればいいだけです。
電車のように「次の駅まで降りられない」という拘束感がないことが、どれほど僕の不安を鎮めてくれたか計り知れません。
移動を「脳のメンテナンス」に変える自転車ハック
天気の良い日には、自転車での移動も積極的に取り入れています。
ADHDには適度な運動が効果的であることはよく知られています。
しかし、「毎日30分ジョギングする」といった目標は、僕たちの特性上、三日坊主で終わるのが関の山です。
そこで僕が取り入れたのが、「移動をそのまま運動にしてしまう」というハックです。
頭の靄が晴れる程度の運動 1時間もストイックに走る必要はありません。ちょっとした買い物や用事を自転車で済ませる。その程度の軽い運動で、脳内の神経伝達物質が調整され、思考が驚くほどクリアになります。
自転車がもたらす「適度な刺激」 風を感じ、景色を眺めながら体を動かす。この「心地よい刺激」は、都会の騒音とは異なり、脳を健康的に覚醒させてくれます。
「ジムに通う」というタスクを追加するのではなく、日常生活の中に「ついでに体を動かす仕組み」を組み込む。この合理性が、ADHDの僕でも続けられる唯一の健康管理術でした。
「娯楽」の幻想を捨て、情報のダイエットを敢行する
「地方だと遊ぶところがないのでは?」という懸念をよく耳にします。しかし、実際に住んでみて気づいたのは、現代において「場所による娯楽の差」はほとんど消失しているということです。
今の時代、僕たちが消費するコンテンツの多くはスマホやPCの中にあります。
どこでも同じサブスク文化 NetflixやYouTube、電子書籍。これらは東京のど真ん中にいても、地方の静かな家にいても、同じように楽しめます。
刺激の質を変える 都会の歓楽街でバカ騒ぎし、強い光と音を浴びることは、ADHDの脳に強烈なドーパミンを与えます。しかし、その反動で訪れる疲弊(クラッシュ)は甚大です。
地方では、アウトドアが手軽に楽しめます。わざわざ渋滞に巻き込まれてキャンプ場へ行く必要はありません。
日常の中に自然があり、静かな環境で読書をしたり、娘と散歩をしたりする時間の方が、脳にとってははるかに贅沢な「報酬」になります。
不必要な情報を遮断し、自分にとって本当に心地よい刺激だけを「選んで消費する」。
この環境が、僕の脳のパフォーマンスを最大化してくれました。
なぜ「環境」を変えることができたのか
ここまで環境ハックについてお話ししてきましたが、最後に一つだけ大切なことがあります。
僕がこの「移住」という大きな決断を下せたのは、これまでの資産形成によって「選択肢」を持っていたからです。
「もし失敗しても、しばらくは大丈夫」という安心感があったからこそ、都会の便利さを手放すことができました。
多くの人が、都会のストレスに耐えながら生活しているのは、それが「当たり前」だと思い込んでいるからかもしれません
。しかし、もしあなたがADHDという特性を抱え、日々の刺激に疲れ果てているなら、「自分の脳OSに合ったハードウェア(環境)」を選び直す価値は十分にあります。
ADHDは「頑張り」ではなく「場所」で解決する
都会の便利さを維持するために高い固定費を払い、その支払いのために無理をして働いて脳を疲弊させる。この悪循環は、ADHDの特性をさらに悪化させます。
移動を「パニックの種(電車)」から「リフレッシュの時間(車・自転車)」へ変える。
都会の「騒音」を捨て、静かな「個人の空間」を確保する。
「ついで」の運動で、脳のコンディションを整える。
「普通の人」になろうと都会で努力するよりも、自分が最もストレスなく機能する場所に身を置く。
それこそが、僕が見つけた最大の生存戦略であり、資産を築きながら愛する家族と穏やかに過ごすための鍵でした。
あなたの脳も、もっと軽やかになれるはずです。
まずは、今いる環境が「あなたの脳のエネルギー」を奪っていないか、一度立ち止まって考えてみてください。


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